【活動報告】Fascial Manipulation® 国際コース レベル3 を受講して:筋膜と内部機能障害へのアプローチ

この記事の内容
国際的な専門家から直接学ぶ、貴重な機会
副院長の柿沼淳です。
先日、2025年9月9日から13日までの5日間、日本大学の三軒茶屋キャンパスで開催された
Fascial Manipulation® 国際コースレベル 3 を受講してまいりました。
今回のコースでは、本場イタリアから理学療法士のLuca先生、そしてカナダからは医師であるAnna先生が来日され、直接指導を受けてきました。異なる国の、異なる医療資格を持つお二人の講師から多角的な視点で教わることで、知識と技術をより立体的に深めることができました。
レベル1・2では、主に痛みや可動域制限といった「筋骨格系」の問題に対する筋膜の繋がりを深く学びましたが、今回のレベル3では、さらに踏み込んだ「内部機能障害」がテーマ。
私たちの身体がいかに精巧に、そしてすべて繋がっているかを再認識させられる、非常に刺激的な5日間となりました。
内容は盛りだくさん。
予習をしていきましたが、それでも講義に食らいつくので必死でした!
身体はすべて繋がっている:筋肉と内臓の連鎖反応
今回のコースで学んだことの核心は、「筋膜」が、筋肉や骨だけでなく、内臓や自律神経までも繋ぐ全身のネットワークであるという事実です。
実は、胃や腸、肝臓といった内臓を包み、定位置に支えている膜もこの筋膜の一部。だからこそ、身体の不調は思いもよらない連鎖反応を引き起こすことがあります。
- 筋肉 ⇔ 内臓の連鎖 例えば、毎日のデスクワークで腰や背中の筋膜が硬くなると、その緊張が胃の不調を引き起こしたり、逆に内臓の不調が腰痛として現れたりします。これは「筋肉から内臓へ」、そして「内臓から筋肉へ」という双方向の関係です。
- 内臓 ⇔ 内臓の連鎖 さらに、この連鎖は内臓同士でも起こります。例えば、気管支炎など(呼吸器の不調)で、その周囲の筋膜が硬くなると、それが隣接する食道(消化器)の動きを妨げ、逆流性食道炎やと消化不良いった二次的な問題を引き起こすことがあるのです。

このように、身体の表面的な問題と内部の問題、そして内部の問題同士が複雑に絡み合っている。この視点を持つことが、不調の根本原因を見つける鍵となります。
身体の仕組みを理解する「新しい考え方」
この複雑な連鎖を理解することは、身体の不調を捉えるための「新しい考え方」そのものです。
「腰が痛いなら腰」「胃が不調なら胃」というように、症状がある場所そのものに原因があると考えられがちです。しかし、筋膜の繋がりを辿っていくと、全く別の場所の異常が原因となっていることがよくあります。
この、身体を部分の集まりとしてではなく、すべてが影響し合っていると捉えることで、不調の根本原因を探る上で非常に強力な武器になると感じています。
「不定愁訴」や「難治性の怪我」の本当の原因に光を当てる可能性
この新しい視点は、特に次のような症状で悩んでいる方々にとって、一筋の光となるかもしれません。
- 不定愁訴:「なんとなく調子が悪い」「病院で検査しても異常なしと言われるが、確かに不調を感じる」といった、原因がはっきりしない症状。
- 難治性の怪我:「何度も繰り返す怪我」や「何をしてもなかなか治らない痛み」など。
例えば、慢性的な疲労感や原因不明のめまい、お腹の不調、あるいはなかなか治らない古傷の痛みなどが、実はこれまで見過ごされてきた「筋肉⇔内臓」「内臓⇔内臓」といった筋膜の繋がりによって引き起こされている可能性があるのです。筋膜へのアプローチを通じて身体全体のバランスを整えることで、長年抱えていた悩みが解決するかもしれない。セラピストとして、これほどやりがいを感じることはありません。
身体を「多角的」に捉える視点の重要性
この5日間で、筋膜というフィルターを通して身体全体(消化器、呼吸器、循環器、泌尿器、内分泌(ホルモン)、造血器)の繋がりへの理解が格段に深まりました。これまで以上に広い視野で、そして多角的に身体を捉えることができるようになったと感じています。
これからの臨床では、これまで培ってきた触診技術をさらに磨き上げることはもちろんですが、それと同じくらい「カウンセリング」の質を高めることが重要になると確信しました。
患者さんが何に悩み、いつからどのようにそれは始まったのか。その方の言葉の裏にある、身体からの小さなサインを見逃さないこと。そうして得られた情報と、こちらが触診で得た情報を統合し、多角的に分析することで初めて、患者さんが本当に抱えている「根本原因」にたどり着けるのではないかと考えています。
おわりに
今回の学びを日々の臨床に活かし、一人でも多くの患者さんの力になれるよう、これからも精進してまいります。身体のことでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。これまでとは少し違った視点から、解決の糸口が見つかるかもしれません。
